STATEMENT
ステートメント
キャッチボールはスポーツではありません。ゲームというわけでもありません。あえて例えるなら、軽いスキンシップに近いかな。挨拶だけのハグもあれば、これまでの歳月やこれからの覚悟など、言葉にするとこぼれてしまうすべてが伝わるハグもあるように、キャッチボールは身体性を介した精神的な交換運動です。
「東京で、キャッチボールができる場所が極端に少なくなった。キャッチボールもできないような場所が、果たして公共空間と呼べるだろうか。子どもたちに対して、キャッチボールもできない街にすることが健全と言えるだろうか」。そんな問題意識に基づいて、「キャッチボールのしやすさで公共空間を評価しなおしてみよう」と始めたこのささやかなプロジェクトですが、調査をしているうちに、「心と心のキャッチボール」「お互いを感じ合えるキャッチボール」が成立する為には、ただ物理的な条件が整っていればいいというものではないことがわかってきました。
我々の調査報告は、キャッチボール初心者にはそれができる場所をシュチュエーション毎に示すものであり、上級者にはキャッチボールにとって本当に大切なものはなんなのか、それを失わずにあれる環境とはなんなのかを確認していただける内容になっていると思います。
そして、できうることなら、それを公共空間をつくる側に身を置く方々や自治に携わる方々にご覧いただき、生活と空間の質との関係の考察の一助として、懐かしくも新しい都市空間を創造する手がかりにしていただけたならと夢想します。
いつか、あなたが、あなたの大切な人(人たち)と、100%のキャッチボールができることを願いつつ。