STATEMENT
ステートメント
調味料の教科書づくり「さしすせそ」
「味醂が何からどうやってできてるかなんて、考えたこともなかった。こんなことでよいのだろうか」という自己反省と問題意識をきっかけに、そしてなによりもそのことへの驚きと好奇心から、2015年7月に、日本の調味料の教科書づくりははじまりました。
当初の目標は、2020年までに子どもが読める教科書をつくって、それを多言語化すること。なぜって、砂糖・塩・酢・醤油・味噌について考えることは、日本に暮らす私たちの営みであり、風景であり、そのルーツを考えることになるはずだという予感があったから。そうした自己理解とその伝達は、きっと子どもたちが見る世界をカラフルで立体的で能動的なものに出来て、他者理解にもつながると思ったから。そしてまずは、それを自分が体感しなければならないと考えたから。
その予感は的中して、「蜂蜜も砂糖なんだろうか?」「味噌と醤油の違いは固体か液体かだけ?」「岩塩に生き物の死骸なんかの異物が入ってないのはどうしてなのかな?」といった次々に湧いて出て来る疑問群は、もっとずっと広大な世界への入口らしいということが、ちょっと扉をノックしただけでもわかりました。
例えば、砂糖は奴隷貿易に代表される世界情勢のスペクタクルが、お酢と味醂はお米の発酵をめぐる微生物の世界がその背景に広がっていて、同時にそれらは私たちそのものでもあるといったようなこと。
どうでしょう。「さしすせそ」を通して示したいことが、商品や製法の良し悪しや食文化の探求じゃない、もっと別のところにあることが、なんとなくおわかりいただけたでしょうか。
大手メーカーにご協力いただいての勉強、産地での取材、文献調査や専門家へのヒアリングといった私たちの旅は、当初の予定を越えて、まだまだ長くつづきそうです。その間に、旅の途中経過をご報告するイベントを開催したり、冊子を発行したりしてゆきます。
そして数年ののちに、必ず、私たちをめぐる私たちの旅を教科書というかたちにまとめます。それが冒頭のようなものであればいいと、そのことを思うと、いつだってワクワクします。
【主催】 醍醐ビル株式会社
【企画制作】 ソシオミュゼ・デザイン株式会社
40 creations 「さしすせそ」制作チーム(加藤麻司、黒澤彩子、田中裕人、中村優、他)